楽器「バズーカ」- Bazooka (instrument, 2008)

個人的にずっと気になっていたヌーン・ジョンソンの怪楽器「バズーカ」ですが、ちょうど手頃な鉄パイプを拾ったので、一念発起して実機を制作し(2008年)、試行錯誤の末どうにか演奏できる状態に仕上げました。なおバズーカという楽器の歴史には意外な広がりがあることが判明、ついてはこれをそこそこ本気で調べ、結果を別ページにまとめましたので御一読ください。→ロケット兵器の語源になった楽器-幻の「バズーカ」


第1世代(2008-2010)

楽器「バズーカ」の構造の詳細は現在も謎に包まれており、この1本は残されたわずかな映像から推理力と独自の工夫を駆使して完成させたものです。素材にした鉄パイプはおそらく洋服掛けのもの、当時はこれにインナーパイプを加えた3ピース構造であり、すんごく重いので演奏は大変でした。この演奏の時にはトロンボーン用のマウスピースを装着していましたが、インナーパイプを交換すればチューバのマウスピースを装着することも可能です。これ以上の詳細は例によってここでは秘密、公園ライブの現場に来て頂ければ空き時間にでも解説させて頂きます。試奏もOK!少しでも集客に結び付けようとの魂胆です。笑

・動画は最も初期のモデル(第1世代)で撮影は2009年12月、たぶんこの演奏が日本ジャズ史上初登場でしょう。演奏はゲストの渡辺タイキさん、「セカンドライナーズ」や「夢ブラスバンド」のチューバ奏者として活躍中の彼ですがトロンボーンの名手でもあり、バズーカの試奏者としてパーフェクトな人材です。

・ちなみに近年「世界唯一の現存するバズーカ奏者」を自称していた米国のOrmly Gumfudginさんが、2009年に87歳で逝去された模様(合掌)、ということは現在これを吹いているバカ者奏者は世界で「タイキ・ワタナベ」さんただ一人?!是非また遊びに来てトライしてほしいです、本人は超いやそうにしてますが。。。

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第2世代(2010-2011)

・2010.09 やす師匠の笑顔もナイスなこの写真はムラサキヤさんのご提供、いつもありがとうございます!春先からバズーカに多数のアップデートを施して、結果がこの第2世代です。ベル(メガホン部分)を少し大きく作り直し、塩ビのマウスピースを新規に作りました。インナーパイプを廃して2ピース構造にしたため、かなりの軽量化を実現。上がEフラットまでしか出ず不便だったのですが、もっちさんの提案に従いパイプを少し切ってFまで出るようにしました(←この自由さが凄いです)。音色もだいぶ太くなってきて、そろそろ完成形かと思われます。

・ちなみにアップデート後のバズーカを、「夢ブラスバンド」リーダーのKonchiさん(tb)に吹いてみて頂いたところ、「うぉ!ちゃんと応答がありますね」との嬉しいご感想、演奏法については「使えそうな音を幾つか見つけて、あとは感性で・・・」という的確な(というか、ずいぶん簡潔な)アドバイスを頂きました!

・ベル(メガホン部分)製作の様子。素材は日産純正エンジンオイルの缶です。業務用トマト缶やメンマ缶などの食品缶は、補強のためのリブ(=うね)が入っており、これを叩いて平坦にするのが大変なのですが、エンジンオイル缶は平坦・厚手かつ大面積の鉄板が容易に採れるので、個人的には最近注目の新素材(笑)です。

・鉄板の扇形は、秘密の自作Excelシート(ベルの円錐形状での所望の大端部直径・小端部直径と軸方向長の値を入れると、展開図での外周円の直径・内周円の直径及び中心角が算出されるようにしたもの)で設計してます。一度作っておくと設計変更が非常にラクになります。駄工作とITの融合ですね。こうして寸法の決定した扇形をドローイングソフトで実物大に製図して紙にプリントアウトし、鋏で切り抜いて型紙を作ります。この型紙を鉄板に載せて周囲を油性フェルトペンでなぞることで形状を鉄板に転写し、金切り鋏で切り出します。

・材料寸法の限界から、120度ずつ3枚の扇形を周方向に継ぎ合わせる設計にしました。3枚の扇形の鉄板を手曲げして全体の形を整えながら、半田で点付け接合します。半田付けは外れやすいので、今度作るときは溶接技術がほしいです。ちなみに隙間はエポキシ接着剤で埋めてビビリ音の防止を図りました。

・ベルの縁は外向きに2回手曲げで折り返して、缶でいう「巻き締め」ふうに仕上げ、剛性・美観・感触及び安全性の向上を図っています。この種の工作では作りこみすぎてマイルドに仕上がっても面白くないのですが、本件では半田焼けの痕が十分に荒々しいので許容範囲内と判断しました。

・ちなみにホームセンターではスチール製のじょうごの既製品は見当たらず、アルミ製のじょうごはあるのですが結構いい値段するし、音質的にも軽すぎて鉄パイプのずっしりとした鳴りを生かせない気がします。

・う~ん、いいかんじにぼろっちい仕上がりです。ハンドルは針金ハンガーですが、もう少し太い針金でも良さそうです。ベルと内管とは粘着テープで固定していますが、ホースバンドで固定してもいいかもしれません。

・ちなみに荻窪の日産工場跡地には「ロケット発祥の地」という石碑がありますが、本件楽器との関連は無いと思います。

・気密性を高めるために、トロンボーンでいう「ストッキング部」(径がわずかに太くなった部分)らしきものを内管に工作して、内外のパイプの間のギャップをギリギリまで狭めました。すると、今度はパイプの真円度の狂いによってスライドの動きが渋くなる場面が出てきました。そこで運搬中のパイプの歪み防止のために、木製布張りの楽器ハードケースを自作してみたのですが・・・実はこれが楽器自体よりも大変でした。詳細はまた長い話になるので(笑)別記事をご参照下さい。→バズーカのハードケース自作

・気密と潤滑のため、スライド部にはスライドグリース(トロンボーンの人が使うらしい)の代用品として、薬局で売っているワセリンを塗布しており、さらに演奏時には水スプレー(百均)を吹きつけています。アプローチとしては間違ってないはず。しかし演奏時の摩擦で鉄粉が出るようで、1日2曲演奏するだけで、掃除の布が見事な赤サビ色に汚れます。白い服を着た人は、この物体には近寄らないのが無難でしょう。本当はステンレスか真鍮で作るべき楽器なのでしょうね・・・。水分を残さないように、手入れにはひどく気を使います。

・マウスピースは、水道管用のキャップ(塩化ビニール製)に穴をあけて作りました。塩ビキャップ頂部の円形平坦部の中央にドリルで6つほど穴をあけ、これらの穴を一つにつなげて紙やすりで円形に拡げてゆき、口縁部を環状のリムらしき形状に整えれば完成です。紙やすりの番手を40番から徐々に1000番まで上げ、さらに古タオルで研磨したので、結構ピカピカの光沢になりました。

・この「外ばめ式」のマウスピースは、これがない裸の鉄パイプの場合に比べて唇の負荷を劇的に軽減でき演奏性が高い上、既存のトロンボーン用やチューバ用のマウスピースに比べて内径が太いので容易に洗浄でき、しかも既存の塩ビのキャップから作れるため容易に自作可能、リム内径やリム表面形状の設計も自由自在という画期的なものであり、これを思いついたときには、自分的にはバズーカ史に残る発明をしたんじゃないかと一瞬興奮しました。

・ところが・・・調べるとこれに似た形状のゴム製のマウスピースがディジュリドゥ(オーストラリアの民族楽器)用として市販されていることが判ってがっかり。発明というのは難しいものです。

・ちなみに水道管用の塩ビキャップは内径が各種ありますが、鉄パイプをホームセンターの水道管コーナーに持ち込めば、ジャストサイズのものを現物合わせで容易に選べます。笑。たしか1個70円とか110円とかで妙に安く、もうホームセンター楽しすぎです。

・このマウスピースはリムの内径をほぼトロンボーンと同様にしましたが、楽器自体がトロンボーンに比べてずっと太いためバックプレッシャーがほとんどないことと、おそらく管長の短さに起因して高音域の倍音が非常に出しにくいことから、トロンボーンとは吹奏感が全く異なり、むしろトロンボーンを上手く吹ける人ほど演奏に難儀するようです。ボブ・バーンズのバズーカも「数多くのトロンボーン名人が演奏に挑戦したが、バーンズ以外の誰も吹けなかった」と言われており、これもこの異様な吹奏感が原因と思われます。

・そんなこともあって最近はもうコバヤシが自分で吹いてます。ドラム以外なんの楽器経験もない自分に、まさか管楽器を人前で吹く日が来るとは夢にも思わず、人生何があるかわかりません。目下のレパートリーは"Bill Bailey won't you please come home"とか"Red Wing"、コードとか理解せずに根性と直感で吹いてるので大変といえば大変ですが、ポジションがシビアでなくアンブシュア(って言うの?)でカバーできる部分も多いため、ここでコードやスケールの勉強をすべきなのかは悩ましいところ。いずれはルイ・ネルソン(Louis Nelson; トロンボーン)みたいに、端正で美しい主旋律と、お約束フレーズのアドリブが吹けるようになるといいなあと思うのだけれど、果たしてそんな日は来るのでしょうか??

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第3世代(2011-)

・「第2世代」までのバズーカの素材にしていた金属管は、演奏するたびに猛烈に錆びるため、毎回のメンテナンス(洗浄・乾燥・ワセリン塗布)が大変でした。この金属管はどうやら「クロムメッキ鋼管」というものらしく、外装はメッキ層で防錆されていても所詮は鉄パイプであるため、メッキ被膜のない内面の鋼材がバズーカのスライド動作に伴って摩擦され、微細な鉄粉が出ます。このことに加え、吹き込んだ呼気中の水蒸気が内壁面で冷却され結露(凝結)することによって、いわゆるガルバニック腐食(異種金属間のイオン化傾向の相違に起因した局部電池作用による腐食)が誘発され、結果として理想の電気化学的サビ環境を提供していたようです。

・他方、一般的な「ステンレス物干し竿」を流用すれば良いかというと、その多くが実はステンレス100%でなく、折れにくくするために主材を鉄パイプとし表面をステンレス箔でコーティングした「複合材2重管」あるいは「ステンレス・クラッド管」と呼ばれるものであるため、これをバズーカに使用すると同様の問題が生じそうです。

・そこで、ステンレス100%の管素材はないか?できれば日用品系で・・・と探していたところ、「浴室用突っ張り棒」(アイリスオーヤマ製)という製品がステンレス100%であることを発見、2011年9月ついにバズーカのステンレス化を決行しました。時間がなかったためネット通販は利用せずにホームセンターに急行、2軒目で「浴室用~」の現物を見つけて、即購入です。実売価格1650円もする製品を新品で購入していきなり真っ二つに切るのは、スーパーケチの私には重大な決断ですが、他の選択肢はなく、後戻りはできません。

・ディスクグラインダーで切るのは住宅街では近所迷惑すぎるため、切断には手動のパイプカッターを使いましたが、さすがにステンレスは硬くて一日仕事でした。久々に手にマメができました・・・。

・意匠面では、ベルに残していた「NISSAN」等の塗装が思ったほど面白くないので紙やすりで剥離し、ハンドル(針金ハンガー製)もブルーのビニールコーティングを剥がして形状を直線基調に整えました。廃物利用楽器ですのでなるべく前世の形態を残したいと思っていたのですが、ロゴマーク等の非素材色の塗装や、鮮やかにビニールコーティングされた素材の使用は、少なくとも管楽器にはジャンク感が強すぎて興趣を損なうようであり(ギター等には良いのかも)、意外にさじ加減の難しいところです。

・ステンレス管のヘアーライン仕上げもきれい過ぎるかなと心配しましたが、結果的にはベルの無骨な円錐形やベル表面の剥離ムラと形状ムラだけでも、管楽器として十分な違和感が出ており、このぐらい抑制的でも自作感が十分表現できているようです。

・ベルの固定は粘着テープから、ボルト締め込み式のステンレス製ホースバンドに変更し、実用性と共にややメカニカルなディテールが加わりました。第3世代バズーカの完成です!仕上がりは大満足、毎回のサビ地獄からついに解放されて、快適そのものになりました。パイプの洗浄時にベルを取り外すため、ホースバンドのねじ頭に適合する7mmナットドライバーをMonotaRoで購入(¥265)、楽器ケース内に常備できてこれまた便利です。

・動画は再び渡辺タイキさん、普段はトロンボーンでどんな曲でも技巧と機知に富んだアドリブを展開する彼ですが、なまじトロンボーンが上手なだけにバズーカの吹奏上の違和感は強烈らしく、またしても苦戦しておられる模様です。苦戦すると分かっていて挑戦するスピリットが素敵ですね。尚この動画には英語の説明文をつけておいたところ、なんとバズーカの発明者とされるボブ・バーンズ(1890-1956)のお孫さんからコメントがつき、又いつのまにか米国の現代芸術家Scott F. Hallさんのバズーカ解説頁「How to Make and Play the Bazooka Instrument」の末尾から「タイキ・ワタナベ、現代のバズーカ奏者」としてリンクされていました。笑

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・ちなみに、簡易な膜鳴楽器であるカズー(kazoo)は英国では「バズーカ」とも呼ばれているようですが、Burnsのバズーカとは別の楽器です。この点、ヤマハさんのサイト(←消えてました。キャッシュはこちら)はいささか混乱しており、「カズー」の解説の中で

「対戦車ロケット騨発射筒・・・の『バズーカ』の命名はこの楽器に由来しています。発射筒の形がカズーに似ていたからにほかなりません。 」

などとしていますが、バズーカ砲の形はカズーには似ておらず、この解説は誤りです。バズーカ砲の命名の起源がカズーでなくBurnsのバズーカにあることは複数の文献で確認でき、また、下の写真↓に見られる形状上の類似性からも明白でしょう。うーん、これもいい写真だ。

Burnsのバズーカが最も注目された舞台が第二次大戦中の米国のしかもラジオショーであったことは、日本人によるバズーカ研究(?)を難しくしているのかもしれませんし、またバーンズの全盛期に「バーンズのバズーカを模したカズー」が市販されていたことも状況をややこしくしているのでしょうが、いやしくも世界の管楽器の1/4を作っているといわれるヤマハさんの、しかもお膝元である日本語サイトの解説にしては検証が甘く、なによりバズーカに対する愛情やリスペクトが感じられないのは残念というほかありません。ヤマハさん、しっかりしてくださいよ!いや本当はどうでもいいんだけどな。ってどっちやねん。

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