ジャズの歴史とニューオリンズジャズ
ジャズは19世紀の終わり頃にその原形ができたといわれており、愛称「サッチモ」で知られるジャズの王様ルイ・アームストロング(Louis Armstrong,トランペット、1900-1971)らは、ジャズの第2世代にあたります。アメリカの南北戦争が終了し(1865)、不要になった軍楽隊の楽器が安く出回り、港町ニューオリンズの黒人層がこれを手にして軍楽隊を真似た合奏を楽しんでいたのがそもそもの始まりで、やがてヨーロッパのメロディーや和音と、アフリカのリズムが混ざり合って、こういう楽しい音楽がいつのまにできた、というのは有名な話。 1916年のイーグル・バンドのみなさん。一流のバンド
だったらしいけど、音源は残ってません。

1930年頃?のパンチ・ミラーさん。 やがてニューオリンズの紅燈街ストリーヴィルを中心に、ジャズがダンス音楽として大層盛んに演奏されるようになり、そこかしこに音楽家があふれ、親兄弟だけでバンドが出来るような音楽一家も数多く誕生しました。しかし、アメリカの第一次大戦参戦(1917)によるストリーヴィル閉鎖をきっかけに、ジャズの中心地はミシシッピ川を北上してシカゴへ、そしてニューヨークへと移ります。その後のスウィング・ビッグバンドの大流行(1920年代末〜40年代)、そしてビバップと呼ばれるモダンジャズの誕生(1940年代)は、今日のジャズの姿を決定的にしました。このへんのメジャーなジャズのお話は、ふつうのジャズ系サイトさんのほうが詳しいので、そちらを御参照下さい。

さて、すっかりジャズの街になったニューオリンズでは、シカゴに行かなかった演奏家や、行っても戻ってきた演奏家たちが、普段は別の仕事をしながら(港湾荷役・郵便屋・職人・警官・保険屋など)、お祭りや週末のダンスホールに、バーベキューパーティーに、お葬式に、はたまた商店や選挙の宣伝にと、あらゆる機会で雇われるようになります。こうして地域に根づき独特の発達をとげたジャズ、これが私共の演奏するニューオリンズジャズです。
選挙カーでジャズですか?このゆるさ・・・。

自作の「バズーカ」を吹くヌーン・ジョンソンさん。
写真と本文は関係ありませんけど、クリック! 演奏された曲は、黒人霊歌、ラグタイム、マーチ、ミュージカルソングなど。演奏スタイルはコマーシャルなものではなく、またアクロバット的な演奏でもありませんが、黎明期のジャズを基本に、南部らしい豊かな歌心と生命力、おおらかなグルーヴ感、名人芸といえる節回し、そしてあらゆる合奏の本質ともいえるインタープレイ(会話的演奏)の魅力をもっています。
やがてニューオリンズジャズは、ジャズの原点の姿を残すものとして「再発見」され(1944年)、いわゆるニューオリンズリバイバルとして脚光を浴びます。1960年代から1970年代にかけては、50代から70代の古老黒人演奏家らによる全米・欧州公演が人気を集め、地元ニューオリンズでも多くの演奏が録音されました。代表的なプレイヤーはジョージ・ルイス(George Lewis,クラリネット)、バンク・ジョンソン(Bunk Johnson,トランペット)、キッド・トーマス(Kid Thomas,トランペット)、パーシー・ハンフリー(Percy Humphrey,トランペット)などです。特にジョージ・ルイスは1963年から何度も来日公演を行い、真摯なプレイで全国のファンに感銘を与えたとのこと。
最盛期(1950年代?)のユーレカ・ブラスバンドさん。

プリザベーションホールで熱演する名物男、キッド・シークさん。1980年代か このようにして花開いたニューオリンズジャズも、ポピュラー音楽の多様化とダンスの衰退とにより、生活に根ざした音楽という存在意義が次第に薄れ、1970年代にはどちらかと言えば観光客向けの音楽となってゆきます。また全盛期の演奏家も一人また一人と鬼籍に入り、これによりニューオリンズジャズは消えてしまう運命かと思われました。

それでも1990年代には、ダニー・バーカー(Danny Barker,バンジョー・ギター)らの熱意によって、現代的センスを身につけた若手演奏家が次々と世に出ており、中でもダーティーダズン・ブラスバンド(The Dirty Dozen Brass Band)やリバース・ブラスバンド(The Rebirth Brass band)が注目を集めています。また、いずれも音楽一家出身であるウィントン・マルサリス(Wynton Marsalis,トランペット)やニコラス・ペイトン(Nicholas Payton,トランペット)などは、モダンジャズの分野でニューオリンズの伝統を踏まえた新しいジャズの創造を試みています。他方ドクター・マイケル・ホワイト(Dr. Michael White,クラリネット)らは、アカデミックともいえる伝統的スタイルの追究から、ユニークな現代型のスタイルを創りつつあるようです。
マルディグラで黒人街をパレードするオリンピアブラスバンド

踊りながらブラスバンドについていく御近所の人々。
「セカンドライン」とはこういう人達を指す語 ともあれニューオリンズは、現在でもお葬式でジャズが演奏されるような音楽の街であり、中心街フレンチ・クォーターには沢山のジャズバーが建ち並び、中でもプリザベーションホール(Preservation Hall)では、往時の演奏家の息子や孫の世代による昔ながらのスタイルの演奏を毎晩楽しむことができます。

ニューオリンズに関する情報源
*ハリケーン「カトリーナ」以降の様子が見られます。がんばれニューオリンズ!
WWOZ New Orleans Live Broadcast ←ウェブラジオ。すばらしいの一語
The Red Hot Jazz Archive ←音源。充実してます
Jazzology - New Orleans, Louisiana ←CD。最大手か
Jazz Crusade Records ←CD。ここもなかなか
nola.com ←現地情報。
best of neworleans.com ←現地情報。


ヨーロッパのニューオリンズジャズバンド

・ごくたまに、ヨーロッパのバンドさんから、当バンド宛にメールが届くことがあります。ニューオリンズジャズは現在でも欧州、とくにイギリス・オランダ・ドイツで結構さかんらしい。かのシドニー・ベシェ(ss,cl)も晩年はパリに住んでいたそうだし、良い土地柄なんだろうと思いますヨーロッパは。ジャズボイラーズでも是非行ってみたいものです。が、待望 のワールドツアーはいつになることやら・・・。

・ヨーロッパのバンドさんたちは1945年以降のリバイバル期の音というよりは、1920年代のオリバーやモートンの音を目指しているバン ドが多いようであり、現在のニューオリンズの音ともまた違った、とぼけた面白さがあります。オランダとかの白人さんが演奏するニューオリンズジャズは、いわばフランス人の柔道大会みたいなもので、ルールとスピリットを一生懸命に導入していながらも、ローカルなゆるい解釈が味です。俺ら東洋人がやるニューオリンズジャズもまあ、そういうもんだろうと思いますし?せっかくの縁なので幾つかご紹介を。

Hot Revival Stompers (蘭)
 比較的若手らしいが、どっしりしたリズムが印象的なリバイバル系バンド。Capt. John Handyみたいなasや、Sammy Pennみたいなdsが居たりして楽しい。英国にツアーするなど、結構売れっ子である模様。メールくれたJeroenくん(cl)は脱退しちゃった模様。
・どうも07年11月に活動停止された模様、残された音源動画を発見。

Sweet Mary Cat (仏)
 リーダーのds(女性!)がLouis Barbarinみたいで素晴らしい、リヨンのリバイバル系バンド。非ネイティブでドラムの上手い人は少ないんですよ。バンドは独・英・加など多彩な出身だそうです。サイトは仏語ですが、それらしいリンク(「EXTRAITS」とか)をたどってサンプルを聴きましょう。

Circus Square Jazz Band (蘭)
 結成1975年の歴史あるバンドとのこと。オリバー、モートンなどの古典からLu WattersやTurk Murphyふうの西海岸スタイル、George Lewisふうのリバイバルまでを手広くカバー。技術は高いようですがどことなくヘンな気配がオランダふうで?いいかんじです。「clip」頁からサンプルが聴けます。
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