ニューヨーク近代美術館永久展示作品(大ウソ)、箱ドラムについての解説。
箱ドラムとココモ・ジョーさん
(c) Emile Martyn & Mari Watanabe
左の写真は箱ドラムの大御所?、ニューオリンズの大道芸人ココモジョー(Joseph "Cocomo Joe" Barthelemy; 1913-1990)。初期R&Bの大スター、ファッツ・ドミノのバンドにいたらしいのですが、晩年は自作の箱ドラムを使ったワンマンバンドで、街の人気者になりました。良かったな、ジョー。

じつはコバヤシも生で見たことはありませんで、Emile Martynさんと渡辺真理さん制作のプライベートビデオ?を見ただけなんですが、カズーでメロディーをとったり、
いい加減な歌詞で歌ったり、スティックを投げたりしながら、たった一人で(!)各種ジャズナンバーを演奏し続けるジョーの芸能スタイルは衝撃的で、全てはここから始まりました。こんなに遊ばせてくれて、ほんと感謝してるんですよ真理さん・・・。

ココモジョーのドラムセットは、今ではニューオリンズの
ジャズ博物館に展示されているんだそうです。宮崎けいさんが現地で実物の写真を撮ってきて下さったんですが、ファイルが壊れてしまいました。残念。ココモジョーのウェブサイトというものは存在しないようです。俺が作るしかないのか?しっかりしろ、目を覚ませ米国人。

ココモジョーが箱ドラムの元祖なのかどうかは、よくわかりません。ガラクタでドラムを自作したいという欲求は
人類共通と思いますので、案外そのまた先生のような人が居たのかも。


ジャズボイラーズの箱ドラム photo by kuryu
当バンドの箱ドラムは概略的にいって、オイル缶のスネアドラムと、木箱のバスドラムとが目玉です。

スネアドラムは、切ったオイル缶の上面に
多数の釘を打ち付けると共に裏側で曲げることで抜け止めしたもので、これはココモジョーのモデルと基本的に同様です(たぶん)。

バスドラムの木箱は、近所の金物屋さんの閉店セールで店頭の陳列棚として使われていたもの(横倒しにして、上に
鍋だのヤカンだのが乗っていた)を、お願いしてもらってきました。正面に張った板には「jazz」の文字をくり抜いて、いったい何の音楽をやっているかがお客様にわかるようにしております(笑)。

バスドラムの周囲には、業務用の
たけのこの缶とか、粉ミルクの缶とか、粉わさびの缶とかを針金でガラガラと付けています。特に粉わさび缶は薄肉なため繊細な音が出る希少品です。いずれも叩いているとだんだんへこんできて響きが悪くなるので、たまに新しいのと交換しています。

缶は基本的に自宅の
近所の飲食店を回って分けてもらいますが、幾つかはお客様にご提供いただきました。ありがとうございます。缶は消耗品なので、新しい空き缶を常時募集中です。

改良前のペダル機構。
竹を使ったのだが耐久性に乏しいバスドラムのペダル機構は、木製のペダル板を踏むことで、ビーター板でバスドラムがドンと叩かれるような構造であり、ペダル板とビーター板とが針金で繋がれて、一種の3点リンク機構を構成しています。 このペダル機構には苦労しました。

ペダルというものは、踏み終わってから足を離すことで元の位置に復帰していることが必要ですが、この復帰力すなわち弾性をどう付与するかが問題です。ココモジョーの箱ドラムでは硬いコイルバネみたいなものをビーター板に固定しているようでしたが、手ごろな代用品が見当たりません。

あんまりお金かけたくないしなあ、と、最初は弾性体にクリーニング屋でくれる針金ハンガーを使ってみたのですが、素材の
弾性変形領域が狭いようで、1曲も叩くと曲がってしまい(塑性変形)、とても使い物になりません。

次に、家の裏から切ってきたを使ってみたところ(左の図)、反発が非常にシャープになり、見た目も楽しくて我ながら名案と思ったものですが、それも3ヶ月ほどで
破断してしまいました。ガーン。

世界初公開、コバヤシ式ペダル機構!
この説明をみて自分で箱ドラムを作ったと
いう人は、まあメール下さいよ。そこで考えた末、ビーター板に必要な機能が「荷重の支持」「旋回運動の許容」「弾性の付与」の3つに分解できることに気づき、これらを別々の部材に分担させることにしました。

つまり、ビーター板の上端を蝶番でバスドラム側と結合して荷重の支持と旋回運動の許容を行わせる一方で、このビーター板を真上からコイルバネで吊り下げて弾性を付与するわけです(右の図)。

「機能を分解してみる」という着想は、今から思えば
旧ソ連で発展したという発明手法「TRIZ」(トゥリーズ)の定石の一つ。果たして、この形式のペダル機構はいざ作ってみると、動作が軽快で耐久性も従来より格段に高く、これでこの種の自作向き吊り下げ式ペダル機構の基本構造としては完成の域に達したと思われます。こんな研究だれもやってないと思うけど、いいんだよ俺は。いいんだよロシア人も。

なお、ペダル板のかかと側とバスドラムとの間は着脱自在にしており、この部分の外れ易さにも長年苦労していたのですが、2004年ついにここの「着脱しやすいが、演奏中に外れにくい」新規な構造を考案、詳細はちょっと秘密にしておきたいので(ケチ)、知りたい方は現場まで見に来て下さい。

手塩にかけた
技術的思想の創作を、電車賃だけで聴けるライブにも来ないような横着者に全部教えてあげるほど、俺お人好しじゃないもんねー。

バスドラムにはシンバルスタンドとなるちゃぶ台用の脚を設置しており、移動の際にはもちろん折りたためます。「畳み」を潔しとする日本建築文化の思想が活かされていますね。そう、技術は国境を越えるのです。違うって。

シンバルを差し込むための棒には、物干し用ハンガーのフックを流用。
先端の「玉」と、フック部の妙に優美な曲線とが中々いいかんじで、期せずしてアールデコ調ってやつですか?

足シンバル機構
ハイハットの代わりに足シンバル機構も作ってみました。これは、蝶番で開閉可能に連結されたペダル板と台板に各1枚のシンバルというか空き缶蓋を互いに対向した状態に設置し、ペダル板を上からコイルバネで吊り下げたものです。

ペダル板を踏むことでチャッという
クローズ音(ドラマーのキミ、わかるね?)が出るわけです。パカパカ動く様子は、見た目にも結構楽しいです。

現在あるハイハットのご先祖である「sock symbal」(1920年代シカゴでBaby Doddsの協力によりLudwigが開発したそうな)というのは、おそらくこういう代物だったのではないかと思われますが、
ぜんぜん別物かもしれません。

コイルバネは我が家で使用済みの「アルミホイル製
換気扇フィルタ」についていたものを使用。最近はこういう消耗品にも、けっこう面白い金具が使われていて、本当に油断できません

コイルバネを吊るための支柱には、当初は缶の切れ端を曲げて使っていたのですが、剛性がなくて演奏中すぐ倒れてしまいます。「台板から垂直に金属棒が突き出ている構造」というのは案外作りにくく、ハンズとかホームセンターを散々歩き回っても、これに適した既存の金具はなかなか見つかりませんでした。

ところが2003年ついに、「卓上用日めくりカレンダーの金具」が流用できることを発見、ついに現在の形が完成しました(右の写真)。

この金具は、もう5年も前に当時の職場で自分が使っていたカレンダーから外して保管していたもので、こういう「
なんか使い道がありそうだと思って、捨てずにストックしておいた金具」が役に立つのは、ほんとに嬉しいものです。

ちなみにコバヤシ自宅にはそんな
使途不明金具のストックがバケツ一杯分あり、嫁がちょっとイヤそうにしています・・・。
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